南ヨーロッパの旅で「フランスの思い出とフランのコイン」
目次
旅のお金、今昔
旅に必要なもの。
もちろんお金。
私はヨーロッパへ行くことが多いので、
常にユーロは持っている状態だ。
ヨーロッパの多くの国でユーロが導入され、
旅の両替は非常に楽になった。
しかも近年では、
ヨーロッパもすっかりカード社会になり、
あっという間に日本も追い抜かれていった感。
旅の両替そのものすら、
ほとんど必要のない状態だ。
私の旅の仕方もずいぶん変わった。
昔は、旅の初日は都市の中心部で両替商を探し、
レートの良い店をチェックするのが日課だった。
ヨーロッパの複数国を周遊するような旅では、
空港や駅で両替を見つけてはレートを確認したものだ。
しかしもうそんな必要はない。
ヨーロッパは北に行くほどカード社会だ。
北欧では現金など要らない。
今では南欧の小さな商店でも
クレジットカードを使えるようになってきた。
便利だが、しかし……
とても便利だ。
いくら両替しようか、どこで両替しようか。
もう悩む必要もない。
国をまたいでも関係なし。
でも、なんだかさみしい。
最初に海外へ行ったとき、
外国のお金は宝物のように見えた。
まだユーロが導入される前、
初めて訪れたヨーロッパの国はフランスだった。
今ではすっかりユーロが定着しているフランスだが、
当時は独自通貨のフラン(₣)だった。
少し大きなサイズのコイン、
色鮮やかな紙幣。
それを見ただけで心が躍った。
しばらく滞在すると、
うまくコインを使えるようになってくる。
自分がその街に馴染んできたように感じて
実にうれしかった。
2013年にフランスへ行ったとき、
パリのサンジェルマンデプレのスーパーで、
レジで前にならんでいたおばあちゃんが
手のひらにユーロコインを広げていた。
若い店員さんがその手から
お釣りの要らないようにコインを拾う。
おばあちゃんは「ありがとう」と言って
レジを済ませて行った。
これが日常なんだろうな。
あのおばあちゃんにとっては、
人生の大半はフランを使う生活だったはずだ。
ユーロには馴染みがなかなかないのだろう。
なんだかその光景を見てちょっと安心した。
便利で新しいもの。
不便で古いもの。
違うからこそ面白さや感激がある。
旅では、
自分の知らないものをいつも探しているのに、
いつの間にか便利さも求めている。
最近の旅は、そのせめぎ合いだ。
家においてある、フランのコインは、
これからも大切に持っておこう。