旅に出られない旅人はどうなってしまうのか<その21>「フィレンツェの庭のハーブに包まれたい」
今日は「旅に出られない旅人はどうなってしまうのか<その21>」。
旅に出られない日々。旅人の戯言、、、?
目次
旅人の戯言?
旅に出られない旅人歴も、かれこれ10か月。
世の中は「GO TO」なのかもしれないが、
私はそんな気分にはなれない。
「行きたければ、行けばいい」と
言われるかもしれない。
でも、まだ私の思うような旅が
できる状況とは思えない。
そう思っているうちは、
旅には出られない、旅には出ないつもりだ。
とか、なんとか、かんとか、
ブツブツ独り言をつぶやく日々。
さてさて、気を取り直して、
旅で出会う美味しいものの話を。
何気ない、さりげない一皿
旅をすれば、ご当地のゴハンを食べたくなる。
でも、こんなに旅に出られない日々が続いたとき、
口の中が懐かしがっているものは、
人気のレストランのご当地メニューや
高級レストランのディナーとかではなく、
何気ない、さりげない、一皿だったりする。
2006年、初めてイタリアのフィレンツェを訪れた。
短い冬の旅だったけど、フィレンツェの
虜になるには十分な時間だった。
(2006年冬。フィレンツェを好きにならない理由が見あたらない。ミケランジェロ広場より。)
その旅の翌年の夏、私はひとりでフィレンツェを再訪。
まだイタリア語がまったく話せないのに、
2週間のホームステイにでかけた。
今から考えれば、なかなか無謀な計画。
でも、なんとしてでもフィレンツェで
暮らしている気分を味わいたくて
その欲望が、その他のもろもろの何もかもを
上回ってしまったのだろう。
ステイ先での食事が懐かしい
ホームステイ先での食事。
素朴で、でも断然美味しくて、懐かしい。
あぁ、このトマトソースの酸味!
ホストファミリーと一緒に準備して、
一緒に食べて、一緒に片づける。
そんな思い出とともによみがえる味。
ある日のランチは、ズッキーニのペンネ。
山盛りのパスタは、イタリアの家庭の味だ。
一緒にスーパーでお買い物して、
その日に買った食材で調理して食べる。
そんなあたり前のことが、特別に感じた。
食事とともに思い出すこと
その後、フィレンツェでは
何度かホームステイをしたのだが、
食事とともに教わったことがある。
2007年に滞在した時のある日の夕食。
ステイ先のお家には素敵なテラスがあった。
なかなか暮れないヨーロッパの夜が
暮れていく様子を眺めながら、
ゆっくりと味わう食事。
そんな時間の使い方を教わった。
そして美味しい食事。
鶏肉のハーブ焼き。
庭のハーブに包まれたい
ホストマザーがキッチンで作り方を
教えてくれるので、いつもフムフムと
聞きながら一緒に調理するのだけど、途中で急に、
「庭に生えてる、サルヴィア(salvia)を採ってきて!」
などと言われるので、キッチンのある2階から
階段を駆け下りて庭へダッシュする。
(イタリア語で「サルヴィア」とは、セージのこと。)
この日の夕食の鶏肉のハーブ焼きも、
私が庭へダッシュして採ってきたセージが、
ちゃんといい仕事をしていた。
どうして庭のセージの場所を知っているかというと、
ステイ先へ到着した初日、家の中を
いろいろ案内してくれたホストマザー。
特に説明が詳しかったのが庭のハーブだった。
これはサルヴィアで、これはバジリコで、、、。
そう、きっとホストマザーは、私がハーブを
採ってこれるように教えていたのだ。
その時はわからなかったけど。
庭にはいろんな種類の背の高いハーブが生えている。
それをかき分け、これだったよね?
と思いながらハーブをつまむ。
どれくらいの量だろう?とか悩んでいると、
2階のテラスから、
「どれかわかったー?」
というホストマザーの声。
「わかったけど、どれくらいの量ー?」
「適当でいいよ!」
大声の会話が静かな住宅地に響く。
そんな暮らしをしていたら、
あっという間にそれくらいの
イタリア語が話せるようになっていた。
2階から降ってくるホストマザーの声を聞きながら、
ハーブをかき分けて急いで駆ける。
フィレンツェの家の子になった2週間。
あの香りにまた包まれたいな。