旅に出られない旅人はどうなってしまうのか<その41>「桜と海。久しぶりの旅が、しっとりと心に焼き付いた話」
今日は「旅に出られない旅人はどうなってしまうのか<その41>」。
とうとう、旅に出ましたという話、先週の土曜日の続きです。
目次
優雅にしっとりと花見を
久しぶりの旅に出た。
旅と言っても、近場の知る場所だ。
2021年3月末のこと。
たった1泊2日だけど、忘れられない旅になりそうだ。
ホテルでの朝食の後は、周辺を散歩。
今年の桜は早い。
ホテルを出て1分。
背の高い桜が、歩道橋から触れられるところに。
朝の風はまだ少し冷たくて、
でも、いいご陽気につられてコートを
ホテルに置いてきてしまった。
だから、一生懸命に歩こう、と思ったのに、
キレイな桜ですぐに足止めだ。
歩道橋の冷ややかな手すりに、桜の影が落ちる。
まるで影までもピンクに染まるんじゃないかと思うくらい、
美しく色づいている。
人通りのほとんどない、朝の歩道橋。
盛大な花見もできないこのご時世、
桜を独り占めにして、ある意味、
これが現代の優雅な花見だ。
こんなに近くで桜をじっくり見るのはいつぶりだろう。
日本人が桜を好きな理由はいろいろあると思うけど、
理由を説明したくない気がした。
だって、素敵だ。だれが何と言おうと。
ちゃんと今年も桜は咲いている。
去年の春、世の中が花見を自粛する呼びかけを行っていたころ、
「桜は来年もちゃんと咲くから」と言っていたのを思い出した。
たしかに、桜はちゃんと咲いている。
静かな歩道橋の上で風に吹かれながら、
ひとりでしっとりと桜を愛でた。
海を目指して歩く
桜をしっとりと愛でた後、歩くこと15分。
私が目指しているのは、海だ。
歩道橋を上がって降りて、
この細道の向こうを目指している。
着いたのは、ここ!
海に面して、細長く公園が整備されいてるエリアだ。
なんだかちょっと場違い感もある木が風に揺れていて、
なんか殺風景な気もする、この場所。
リゾートでもないし、海水浴場でもないし、
キレイな海があるわけでもない。
でも、数年前にも訪れたことがあって、
また来たくなった。
なんだか、この解放感?寂れ感がいいんだよなぁ。
ここに来たくて、同じホテルをとったのかもしれない。
こんなひと時を求めて
大きな船が私の左から右へ進むのを、
じーっと見て過ごすひと時。
風はだんだん暖かくなってきて、
陽も高くなってきた。
まぶしくて目が開けていられない。
とても静かだ。
だれもいないというわけではないけど、
小さい子どもを遊ばせに来た父子や、
かっこいい自転車にまたがって
おそらく長距離を走ってきたおじさまが休憩しているくらい。
しっとりと海を眺める。
そうか、こんな時間を求めてここに来たのかもしれないな。
旅には、こういう時間を過ごすという要素が
いつも盛り込まれていたんだ、自然と。
それが欠落していたから、
この場所に来たくなったのかもしれない。
この景色をまだまだ眺めても、
ホテルに引き返しても、
再び桜を愛でに行っても、
それをとがめられることはない。
私の自由。
それこそ、ひとり旅の特権。
静かで殺風景で、ちょっと寂れた公園から眺める海。
マスクの下でブツブツ言いながら、
素敵な時間を満喫していた。
(続きはまた来週の土曜日に。)