≒(ニアリーイコール)を楽しむ言葉の世界<その16>「ポルトガル語のリズムと郷愁【後編】」
土曜日は、言葉のお話を書いています。
今日は「ポルトガル語のリズムと郷愁<後編>」です。
旅中毒にはなかなかつらい「今」ですが、
また旅に出る日を想いながら書いています。
前編はこちら
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目次
「オブリガーダ」と言いたい!
すっかり虜になってしまった
ポルトガルの旅。
(黄色のケーブルカーに魅せられるリスボンの街歩き。2002年に撮影。)
そんなポルトガルの旅で、
私が一番発したポルトガル語は、
「ありがとう」という意味の
「obrigada」(オブリガーダ)だろう。
ポルトガル語は、フランス語やイタリア語、
スペイン語と同じくラテン系の言語で、
言葉には性別がある。
最初はそれがとっつきにくくて、
学ぶ意欲が失せてしまったりする。
イタリア語を学ぶ時、まあまあ最初に出会った壁だ。
だって、言葉に性別があるっていう感覚は、
日本語が母国語の私たちにはなかなか理解しがたいし、
しかも法則がほとんどないからだ。
でも次第に、私はそれが愛おしくなってきた。
なぜ駅は女性で、電車は男性なのか。
なぜ手は男性で、脚は女性なのか。
なんだか哲学的な匂いすら感じておもしろい。
言葉のリズムが心地いい
それはさておき、ポルトガル語の「ありがとう」は
男性が発すれば「obrigado」(オブリガード)となり、
女性が発すれば「obrigada」(オブリガーダ)となる。
ポルトガルの人は、あまりはっきりと発音しない。
特に語尾は消えかけるように口の中で
ムニョムニョ……と言う。
(ポルトガルの人は、シャイだけど優しくてホントはちょっとおせっかいなとこもある。
みんな、親戚のおばちゃんとおじちゃんみたいな気がしてくる。2006年撮影。ビカ線の運転士さん。)
ポルトガルの人はどちらかというとシャイな感じで、
おしゃべりは好きだけどハキハキと話す感じではない。
ポルトガル語を学ぶなら、それは難点のひとつだが、
この言葉のリズムが心地いい。
ちょっと哀愁漂う感じだ。
ポルトガルの民謡、ファドの雰囲気そのもの。
同じラテン語系のイタリア語とはまったく違う。
イタリア語ははっきりと口を大きく開けて発音する印象だ。
でもそれが、自分の意見を堂々と朗々と語る
イタリアの人にはやはりぴったりだ。
旅の思い出と言葉の楽しみ
ポルトガル人のように、
そっけなく「オブリガーダ」と言いたくて、
旅の道中、何度も言ってみる。
今の、ちょっとポルトガル人っぽかったかな?
などと思いながら。
旅の楽しみに言葉の楽しみはいつもくっついてくるものだ。
私の中では「オブリガード」という言葉は、
単に「ありがとう」という意味ではない。
(ロシオ広場からカステッロを。のどかな首都リスボン。2006年撮影。)
旅の思い出とか、憧れとか、郷愁とか、哀愁とか、
もっともっと深く大きな意味を持っているのだ。
(終わり)
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