≒(ニアリーイコール)を楽しむ言葉の世界<その4>「日本語にもあったらいいな!こんな素敵なイタリア語」
いろいろな悩みの中ですが、今日は、私の好きな言葉を。
目次
もともと言葉が好きだったので
私にとって、最初の外国語は英語だ。
中学校の授業で習う英語。
颯爽と教室に入ってきた若い英語の女性の先生が、
英語で自己紹介を始めた時、
「なんて格好いいの!」と憧れた。
当然のように好きな教科は英語になった。
しかし、よくよく考えてみると、
私は英語が好きなんじゃなくて、
言葉がそのものが好きだったのだ。
自分にとっては、あたり前すぎて見えないもの。
中学生の頃、私は、国語辞典を読むのが好きだった。
まわりからは、「変わってるね……」と引かれたけど、
全然関係性のない言葉が隣同士に並ぶ姿、
私にとってはツボだった。
(国語辞典が読み物だった話は、またいつかどこかで……。)
イタリア人の会話に頻出のワード「simpatico」
(ステイ先で料理するホストマザーとその友人。イタリアのフィレンツェで。)
(ご飯を食べながら、イタリア人はいっぱいしゃべる!リスニングの勉強には最適)
イタリア人の会話を聞いていると、
よく出てくるワードの1つに、
「simpatico」という単語がある。
「simpatico」は形容詞で、日本語にすると
「感じの良い」「好感のもてる」「親しみがわくような」と
翻訳される、バチっと日本語では決まらない言葉。
「=」では表せられない「≒」(ニアリーイコール)の言葉。
英語の「sympathy」と同じ由来の言葉のようだ。
イタリア人との会話は他己紹介の嵐!
「simpatico」は、実にイタリア人的と言うか、
ラテン的な言葉だと思う。
ラテン系の人々は、自分の感覚をとても大切にする人たちだ。
そして、人と話をするのが大好き。
その場にいない人の話で盛り上がることもしばしば。
イタリアでホームステイすると、
ホストファミリーが実にいろんな人を紹介してくれる。
家族や親せきはもちろんのこと、それぞれの友達や
近所の人、行きつけのバールの店員や友達の友達に至るまで。
人の話をするのが大好きなのだ。
ホームステイに2週間ほど行くと、
ホストファミリーの他己紹介を延々と聞くことになる。
真面目な日本人の私は、最初はなかなか名前が覚えられず、
「教わった人の名前が覚えられないなんて失礼だ」と思って
メモをとったりしていたのだが、
そんなことはイタリア人にとって大したこではなさそう。
なんせ紹介したいのだから、一生懸命それを聞けばいいだけ。
(地元のバールなどは、店員も客もみんな顔なじみ。名前もだいたい知っているみたい。)
人を紹介するとき、まずは名前から。
そしてその次、日本なら年齢とか背格好とか
エピソードなどの情報が盛り込まれそうだが、
イタリア人の他己紹介は、その性格がどんとくる。
その時にでてくるのが、
「simpatico」という素敵な言葉。
英語の「sympathy」は「共感」の意。
その人物が、自分と「共感できる人だ」という
ニュアンスが含まれているのだと思う。
日本語にも欲しい!絶妙なこのニュアンス!
イタリア語は男性・女性名詞の区別があるので、
形容詞もそれに伴って語尾変化をする。
男性なら「simpatico」、女性なら「simpatica」で表す。
「なんということもないけど、なんとなくいい人だ」という
この絶妙なニュアンス!
一言で言えば「感じがいい」ということになるが、
日本語にするとぼんやりしていて、
バチっとくる言葉が見当たらない。
ぜひ日本語にもあったらいいのになと思う。
そして、私もだれかにどこかで言われていたい。
「あの人、simpatica だね」って。
だいたい土曜日に言葉のついての記事を書いています。
↓